スレンダーな体型に自転車便ウエアというか、自転車ファッションはよく似合っている。足がきれいなので、自転車に乗っている姿がとても〈絵〉になっている。おっと、「
自転車に乗っている」と書いてしまった……そうなのです、由美子は故郷へ戻ることを思いとどまり、横田の入院中に自転車便に参加。尚実といっしょに東京を疾走するのだ。
この映画は女優・京野ことみの代表作になるだろう。利発で機転のきく由美子は、京野ことみの〈分身〉のような気がする。TV「タブロイド」で見せた〈ボヘミアン〉のような整理部記者とは対照的なキャラクターだ。由美子のほうが素顔の京野ことみに近い。
出番のないときや撮影準備のとき、彼女は決まって馬場監督のうしろにちょこんと座り、真剣なまなざしでビデオモニターを見入っている。演技の研究か、あるいは映画全体を懸命に理解しようとしているのか……。いずれにせよ、『メッセンジャー』にひたむきなほど〈
向かいあっている〉。馬場監督やスタッフたちの話にも熱心に聞き、いろいろなことを吸収しようとしている。その姿勢がこのところの躍進の源になっているのかもしれない。芸の肥やしを現場で掴もうと懸命。撮影が進むに連れ、表情がとても豊かになっていった。それは由美子の〈成長〉でもある。登場人物の中でドラマ前半と後半の表情が大きく違って見えるのは由美子=京野ことみだと思う。
横田が予定より早く退院、自転車便のオフィスへやって来た場面の嬉嬉とした中にもちょっぴり〈困惑〉といった複雑な表情を浮かべるところは見所の一つ。撮影を見ていて思わず「ウマい!」と心で叫んでしまった。京野ことみ=由美子に期待していい。