「いいでしょ監督、スタントなしでも大丈夫。僕がウィリーしますから。それくらいできなかったら嘘ばっかりになっちゃうし……」。

　自転車に乗るシーンの何日目かのこと。 鈴木宏法役を演じる草なぎ剛さんは、自分からアクションをかって出た。これにはスタッフ一同ビックリ。そして何よりMTBのコーディネイトをしている僕がビックリした。草なぎさんが運動神経がいいであろうことは想像ができていた。しかし、なにせ売れっ子の役者さんであるから怪我なんかされたら大変だ。テレビ・ラジオ合わせてレギュラーは週に７本。自転車は壊れたら修理・交換すればいいが、草なぎさんの代わりはないわけで……なんて心配をよそに早速ウィリーの練習ははじまった。

　MTBに乗る人なら、ウィリーのきっかけはわかるかもしれない。少し軽めのギア（フロントをセンター、リアを軽いほうから二段目あたり）にセットしておいて、強く踏み込むと自転車の前がフワッと浮いてくる感じになる。このタイミングで腕を延ばし、上体を後ろにそらせ胸を張るようなポーズになると、いわゆる「ウィリー」になる。さらに後輪のみで立ったまま走るわけだから、バランスさせるのはかなり難しい。MTBに慣れた人でもなかなかできないウィリーを、彼は１時間程度の練習でほとんどマスターしてしまった。

　さらにこれに芝居がつく。清水尚実役の飯島直子さんと草なぎさんのツーショットシーン。
「お得意先のルート教えるから、ついてこい！」
と言って勢いよくウィリーで走り出す鈴木、と続く。さて、出来映えの方ですが……なかなかなものですよ。本編にてじっくり見ていただきたい！